注目が高まりつつある「ひょうご北摂」。
人を魅了してやまない本物のおいしさ、
おもてなしの心がこもった食のお店が多数あります。
車でなければ、決して「行きやすい」とは言いにくい場所にもかかわらず、このお店を目指して日本各地から連日多くの人が三田市にやってくる。2003年のオープン以来今もなお、多くのスイーツファンの心をつかんでいる、洋菓子店『パティシエ エス コヤマ』だ。
数多(あまた)の賞を受賞している世界的なショコラティエであり、オーナーシェフの小山進さんは、「主要な駅から徒歩何分がいいかは全然興味がなかった。みなさんが『食べたい!』と思う、力の強いものをつくって、これが環境とマッチして、伝えたいものがそこにリアルにあって、そういう本当のモノづくりを伝えなくてはいけない時代が、きっと来ると思いました。自分にしかできない場所はどこかと考えた結果、日常の中に自然があり、自然の中で創作ができる場所を全国的に探し、三田市に決めました」と当時を振り返る。300坪から始めたお店は、お客さん目線で感じた”不具合”を改善する中で拡張。現在では1500坪の敷地内に、ショコラ専門店やデコレーションケーキ専門店など8つの異なる趣旨の店舗が軒を連ねている。12歳以下の子どものみが入店できる『未来製作所』は、家庭内でのコミュニケーション不足という、世の中の„不具合"を改善したいという動機から生まれたそうだ。„まちのお菓子屋さん"の枠を超えた店舗づくりもファンが多い理由のひとつなのだろう。
まちが豊かになるには「外部から人に来てもらうにはどうするか」をもっと考えるべきだと小山さんは話す。「『食』というのは、わざわざ行く大きな行動理由になる。そんな『強いお店』を、点と点で結んで地域の力を上げていく。三田だけでなく、ひょうご北摂、兵庫県全体として、力を入れて取り組んでいくべきだと思っています」。
ハマ・ノ・テlabo
清和源氏」発祥の地であり、源氏ゆかりの多田神社がある、川西市。近くには猪名川のせせらぎ、店の裏手には広い園庭と樹木に囲まれた穏やかな印象の保育園──。「この環境が気にいって、店の場所を決めましたね」。そう話すのは『ハマ・ノ・テlabo』オーナーのハマダサトミさんだ。地元出身のハマダさんは、会社勤めなどを経て「自分が行きたくなる店をつくりたい」という想いで、2013年にカフェをオープンさせた。おっとりとした雰囲気のハマダさんの店らしく、時間がゆっくりと流れているかのような空間は居心地がいい。地域に、一人の時間を楽しむことができる、こんなカフェがあるのは貴重だ。
オリジナルブレンドのコーヒーと、手作りの焼き菓子が基本。「もともとコーヒーが好き。小さいころから、お菓子作りもしてきたので、自分でやるならその2つを扱うカフェかなって。ラボ(研究室)のように、いろいろな化学反応を起こせたらと思っています」。シンプルな店内は、どこかの工房のようでもあり、ギャラリーのようでもあり。聞けば、店内でアートの作家などの企画展を開催することがあり、そんな時、ハマダさんも企画内容に合わせた菓子を開発・提供することがあるそう。「作家さんのテーマをお菓子で表現するのは大変。でも、そんな時間が一番楽しいかも(笑)」。
カフェオーナーであるハマダさんには、作家の気質もあるのだろう。ハマダさんの周りには、モノづくりをはじめ、感度の高い人たちが集まっている印象で、店内に置かれていたカルチャー系イベントや個性的な店のフライヤー、ショップカードがそれを物語っているように思えた。「周辺ではいろいろな活動をされている人たちがいますよ。わざわざ遠くから来てくれたお客さんには、周辺にある素敵なお店やギャラリー、イベントなどの情報をできるだけお伝えしたいですね」