たとえば音楽や自転車を軸に、
自分らしさを実現している人もいる。
ここは自由な考え方、個性を活かす素地がある地域です。
今や”伊丹市の夏の風物”と呼べるほど、大人気のイベントとなった「ITAMI GREENJAM」。市民の憩いの場として親しまれる昆陽池(こやいけ)公園を舞台に、多彩なアーティストのライブをはじめ、地元クリエイターによるマーケット、伊丹を中心に全国から集まった美食を楽しめるフードコートなど、幅広い年齢が遊べるイベントとなっている。始まったのは2014年。今では2日間でおよそ2万人を集客する、関西最大級の無料ローカルフェスである。
主催するのは、伊丹市出身の大原智さん。神戸のインディーズレーベルに所属し、バンドマンとして活動した後に地元へ。経験を活かし、伊丹や尼崎、川西などで、音楽スクールを事業展開。そんな中、「ITAMI GREENJAM」の構想が具体化し始めたのは2013年後半のこと。「街づくりの先輩たちと仲よくさせてもらうようになり、夢だった音楽フェスが、『いつかやりたい』から『やれるかも』に変わっていったんです」。街づくりを実践してきた人たちの後押しもあり、大原さんも本気になった。課題であった資金と場所についても、さまざまな街の人たちのアドバイスを参考にクリアし、ついには開催にこぎつけた。「もう感謝しかないですね。街の人の協力がなかったら、開催できていない。協賛金もそうだし、ボランティアもそう。今は、どうしたら街へ恩返しをできるか、そのカタチを日々考えています」。街への恩返し。その一つが2017年に立ち上げた一般社団法人『GREENJAM』。イベントをきっかけに集まったコミュニティには、さまざまなスキルを持った人たちがいて、彼らが社会で力を発揮できる機会を創出したいという想いから。「今度は、みんなの夢、街の未来をサポートしていきたいんです」。
元自転車のプロ・ロードレーサーが立ち上げた、地域密着型のサイクリングチームが北摂エリアにある。それが『コラッジョ川西サイクリングチーム』だ。川西市を拠点に、23歳以下の若手育成に主軸を置いたチーム運営で、アジアチャンピオンや日本のトップ・プロチームに移籍した選手を輩出するなど、実力も高い。
チームを率いるのが栂尾大知(とがおたいち)さん。アスリート一家に育った栂尾さんは、中学2年で自転車の道を目指すことに。クラブチームに入り、さまざまなプロチームで活躍した。川西市へは2011年に神奈川県から移住。当地の立地に惚れ込み、前出のサイクリングチームを発足したのが2015年。「サイクリスト目線で見ると、川西市のポテンシャルは相当高い。大阪の都心部からも自転車で約1時間という近さ。大阪府能勢町や能勢妙見山、三田など、サイクリストにとって最高のルートへの玄関口ですし、福井県の小浜市や京都府の天橋立などへも日帰りで行ける。また、あまり知られていないのですが、京都府や奈良県までルートの8、9割を、自転車道を走って行ける。こんな地域、なかなかありませんよ」。
栂尾さんはバイシクルプロジェクトという団体を立ち上げ、チーム運営と同時に、地元でサイクリングを軸にしたさまざまな事業も手がけている。県や市と協力しながら、サイクリングマップの作成・監修やイベントを手がけたり、地域の中学校で自転車教室を開催したり。さらには企業のサイクリングツアーの際に自転車の貸し出しなども。最近では、地元・川西市観光協会の理事にも選出され、活動の幅をさらに広げている。
「僕には夢があって、一つは『コラッジョ川西サイクリングチーム』をアジアのトップ・カテゴリで勝てるチームにすること。そしてもう一つが地域での夢。ゆくゆくは北摂を含めた、兵庫県全体をステージにしたロードレース„ツール・ド・ひょうご"を開催したいんです」